001「なくなる傘」

“涙雨”とはよく言ったもので、雨降りの葬儀は憂鬱なもの。間違いなく会葬者は傘をさしてくる訳だが、この傘が曲者。雨の場合、会場には傘立てが用意されるが、傘の取り違えが非常に多いのだ。
多くの会葬者(特に男性)が黒系の傘を持ってくるからまたややこしい。 ましてや高い高級傘などさしてきた日には、自分の焼香が済んだ頃には無くなっていると思ってほしい。
ああいう場合人間大らかになるのか、自分のものとは違っても「早く帰りたい」→「自分のものじゃないけど似ている」→「早く帰りたいからこれでいいか」→「その人も誰かのを使って帰るだろう」と一瞬で判断し、勝手にさして帰ってしまうのだ(推測)。

高級傘は葬儀会場に持ってきてはならない。
もし持って来た場合は、柄の部分にネームプレートやタグなどを派手に付けて、手の感触で違うと思わせること。冬なら手袋や帽子などを柄に巻き付けるのも良い(要は目立たせること)。絶対取られたくないのなら折りたたみ傘にし、水をよく切りビニール袋などに入れて自分のバッグにしまうこと。肌身離さず持つことが、自分の物を無くさない唯一の方法なのだ。

002「すり替わる靴」

受付が済み焼香が終わったあとは、大抵“通夜振舞い”が用意される(“お清め”とも呼ばれるが、宗旨によってはこの言葉を使わない)。
会場まで靴のまま上がれれば良いが、問題は靴を脱いで上がる会場だ。場所により札式の下駄箱があったり下足番がきちんといたり(合い札を渡されて、帰りに札と引き換えに靴がもらえる。ホテルのクロークと同じ)、靴袋が用意されていたりするが、何の用意もなされていない恐ろしい(?)会場がたまにある。
まず間違いなく90%は黒の革靴である。あの状態で瞬時に私物と見分けることは、かなり難しい。またここで人間は大らかになり、一秒でも早く帰りたいあまり「履けたからいいか…」と、他人の靴を履いて帰ってしまうのである!!たまたま係の者が近くにいれば注意を促しきちんと探してもらうが、何十人分もの靴が乱れ飛ぶ玄関先では判断がとても難しい。

高価な靴で葬儀会場に来た場合、靴を脱がない。
どうしてもお斎の席へ上がらねばならない場合は、洗濯バサミで自分の靴を挟み目印とするか、手袋やハンカチなどを靴の中に入れ、他人のものと見分けておくと良いだろう。他人の手が絶対届かない場所へわざと置くのも有効だ。しかしその場合置いた場所を覚えておかないと、あとで大変な苦労をする。やはりバッグにはビニール袋を一枚は常備しておいて、靴や折りたたみ傘を入れられると、いざという時に慌てないだろう。